気づけば、あなたが

「どうする、教室に寄ってく?」



「う・・・ん」



返事に困っている。


というより、陽介と顔を合わせたくないような、それでいてさっきの事が気になって仕方なかった。



「さっき陽介とすれ違ったけど、無視された」



乱暴な言い方だったが美波はそう告げた。



「そうなんだぁ」


「で、教室には寄ってくの?」



「行くよ、クラスで約束したしね。ちゃんと報告するって」



杏は今度はキッパリ答えた。



「いつもの杏だね」


美波は笑みを見せた。





三階の廊下に出ると生徒達が教室を出入りしている。



「あっ、おかえりー!!どうだったぁ?」



クラスの友人が駆け寄る



美波はVサインで答えた



「うちのクラス、今のところ全勝だよ」



杏は教室の中を見回す。



陽介はいない。


「ねえ、陽介は?」



「さあ?」


「先に戻ってるはずだけど」



「陽介なら佳奈と一緒に四階の踊場にいたよ」


別のクラスメートが答える。



「何か、佳奈らしいよね」


「そうそう、前から陽介の事を好きだって言ってたし、落ちても慰めてくれるじゃない? 卒業も間近だからこのまま付き合っちゃおうかな・・・なんてね」