気づけば、あなたが

職員室の前は生徒達が激しく出入りしていた。



杏もちょうど中へ入る所だった。



「杏!」



振り向く彼女の表情は少し落ち着いたように見えた。



「大丈夫?」


「う・・・ん、なんとか・・・さっきは急にゴメン!」



杏は手を合わせながら笑顔を見せた。


二人は揃って中に入った。



「おっ! その顔だと二人ともおめでとうだな」


担任は名簿にハナマルを付けた。



「美波はよく頑張ったな急に志望校変えるから、俺の方が焦ったけどな」


「えっ、いつ志望校変えたの?」


「願書提出の二週間前かな」


淡々と答える。


「元々は紅南校だったよな」



杏はちょっと複雑な気持ちだった。



「高校も一緒に通学したかったけど、その高校の先輩に色々な話を聞いて、自分のやりたい事見つけたの」



「そうだ、陽介も合格したぞ。お前たちより三十分位前に来たな」



やっぱり、あのまま帰ったんだ。



「先生、隣のクラスの佳奈も一緒でした?」


美波は小声で聞いた。


「ああ、そういえば陽介が坂本を引っ張って来てたな。彼女は残念だったが、志望校をやっぱり急に変えてきたからなあ」


佳奈までも・・・



美波は杏を小突いた。

「先生、私達はこれで帰ります」


まだ何か言い足りない杏を強引に引っ張って職員室を出た。