本田の家へ着くとやはりそこでもリビングに通された。



両親共働きで留守だった



本田は一人っ子なので、この環境にはもう慣れっこだ。



「コーラでいいか」


冷蔵庫から三つ缶コーラを出してテーブルに置いた。


陽介はこの家には何度も訪れているので自分の部屋のように寛いでいる。


「本田んちって、凄くキレイじゃん」


「うちのお袋、整理整頓が趣味みたいなもんだから」


「で、アンタの部屋は?」



「まあ一般的な学生の部屋よりはマシな方じゃないか」


本田は得意気に言った。



それからたわいない話題でおしゃべりしていたが、急に陽介が真面目な顔つきで美波に尋ねた。



「杏はなんであの高校を受けたんだ?」



「だって憧れの先輩がいるからよ」



「憧れ? 誰それ?」


本田は聞いた。


「陸上部の神崎龍也、元生徒会会長」


「なんかすげー高望みじゃん」



「部活で一緒だったし、結構気にかけてもらったりしてたから」



「モテモテの先輩だったから特定の彼女はいなかったしな」



「あの先輩、そういうの興味無かったらしいし」


美波は本田が後から出してきたスナック菓子を手に取った。


「ん! これ美味しいよ、新発売?」


「そう、昨日コンビニで見つけた菓子」


コンビニ大好きの本田は得意気に答えた。