ホームルームの後、卒業式の練習が行われた。



美波もあれから何も言わない。



陽介は少し疲れたようなため息を洩らした。




卒業証書授与のリハーサルが始まり、長丁場となる。


緊張の糸もほぐれてか、ざわつき始める。


先生の声が響く。


次々と生徒達が壇上に立ち、また降りてくる。



陽介もゆっくりと立ち上がり、徐々に進んで行った。



何となく視線が女子の席にいった。



杏が座るはずの空の椅子。



何故か心にぽっかり穴が空いたようで、陽介はしっくりいかない自分が不思議でたまらなかった。



やっぱり帰りに寄って行こうか・・・。



そんなふうに思った。



「風見、お前の番だぞ」


考え事をしていた陽介は、担任の先生に促された。


「あっ、スミマセン」


陽介は慌てて壇上に上がった。



・・・やばっ、みっともねぇ・・・。


顔が火照りそうになる。



・・・落ち着け、落ち着け・・・。


何度も自分に言い聞かせていたが、壇上での練習はスンナリ終わった。



また席に戻ると、フーッとため息を一つついた。