気づけば、あなたが

先に部室から出た杏は
グラウンドに行き、
ウォーミングアップを始めた。


体を温めながら、周囲の様子を伺っていた。


他の一年生部員も次第に集まって来る。



そして、やはり注目の的になるのは杏だった。




この間のタイムで、全てを決定したわけではないが、本当に他の一年生は納得しているのだろうか…


杏はどうしても、そのやり方に疑問を感じた。





それでも、舞はストップウォッチを手にしてゴールラインで待っていた



杏はスタートラインに立った



周囲に緊張感が漂う



「2、3本 軽く走ってからタイムを取るから!」



舞がメガホンで、指示を出した




杏は手を挙げて、まず軽く流して走った




舞は、杏のフォームをチェックしながら状態を確認していた




「どんな感じ?」

舞の所へ龍也が来た


「うーん…全ては彼女の出すタイムのみかしら」

「今日のタイムだけで、決めるのはどうかな…」

「他にも期待している新人はいるのよ
彼女が駄目なら、次の候補者でしょ」


「相変わらずシビアだね」


舞は龍也の方を、チラッと見た


「龍也が海藤さんを推したいのは、他に意味があるからかしら?」


「別に」


龍也は、すぐに答えた



「タイム、お願いしまーす!」
杏の声が響く


そして、舞の手が挙がった


その瞬間 ざわめきが消え、舞の手は振り落とされた…