気づけば、あなたが

それから陽介とは、会わなかった。


授業も終わり、部活へ行く準備をしていると、部室に副部長の舞が入って来た。


「あら早いわね」


「あっ・・・はい」


杏は、どうしても彼女が苦手だった。



「今日は何本か走った後、タイムを録るから」


「全員ですか?」


「今日は海藤さんだけ。
春に大会があるんだけど、短距離の新人枠が2つしかないから」



男女一人ずつ・・・ってわけか


杏は、その言葉が
少し重荷になってきた。



「あなたに期待が かかってるんだから 頑張ってもらわないと」


舞はそう言いながら
着替えを始めた。



杏は中学を卒業してから少しだけ 情緒不安定になっていた。


この状態のままで、本当に走れるのだろうか?


そんな思いが、頭の中を駆け巡っていた。