気づけば、あなたが

杏は朝から、調子が良くなかった。



特に風邪気味でもない。



とにかくダルい・・・


その一言に尽きた。



3時限目の授業が終わり相沢留奈が心配そうに顔を覗き込んだ。



「どうした?」



「ん・・・・・・何か気乗りしないっていうか」


「何か悩み事?」



留奈はブラシで髪をとかしながら聞いた。


「部活 思ってたより楽しめない・・・」



留奈は髪をとかしていた手を止めた。


「将来を有望視されてる人が、何言ってんの!」


それでも杏は、浮かない表情でいた。


「それより、隣のクラスの彼・・・えーと・・・風見陽介、何か超カッコいいよね」


「陽介・・・?」


「杏は彼と同じ中学だったっけ・・・彼女いるのかな?」


留奈は目を輝かせていた。



「さあ・・・?」


杏は、そう答えた。



「オーイ、高木!」



「あれ、噂をすれば風見君だ」

留奈の指差す方を、杏は振り返った。



そこには陽介がいた。

しばらくぶりに見る彼の笑顔。



杏は すがるような目で陽介を見つめていた。


そして・・・


一瞬、陽介と目が合った。


陽介はフッと笑みを見せた。