その日は、もう陽介と顔を合わせる事はなかった。



放課後・・・


部活動が始まり、見学する者がいた。



杏は初めは見学しようとしたが、急に気が変わってしまった。


陽介のこと



あんなに閉ざしていた心の鍵が、陽介と話をした瞬間、カチャリと音をたて、意図も簡単に解き放たれたのだ。



自分でも、予想外の展開だった。




今度は陽介のことばかり気にし始めている。



・・・陽介はバスケ部なのかな?



春休み、少し見ない間に、さらに伸びた身長。



完全に見上げる形になってしまった。



次第に募る思い。



そんな杏の目の前に立つ者がいた。



「神崎先輩!」


そこには笑顔の神崎龍也が立っていた。


「あれ? 見学しないの?」


「あっ、スミマセン・・・やっぱり今日は帰ります」


杏はハニカミながら言った。


「少し時間いい?」


「はい」



龍也は校舎の影に入ると、杏を呼んだ。


杏もそこへ行き、二人は完全に他の生徒からは見つからない場所にいた。



「海藤・・・俺と付き合わないか?」



・・・えっ!!!