気づけば、あなたが

「田崎、何であんな事を言ったんだ」



「だってそうでも言わなきゃ、あなた目当ての不純な動機で陸上部に入る人がいたら迷惑でしょ」


舞は多少 意地悪な口調で言った。



確かに舞の言っている事は正しい。



「今日ここで釘を刺しておけば、大方減ると思ったから、そう伝えただけよ。
何か問題でもあるのかしら神崎君?」



「もう伝えてしまったものは、しょうがない」


神崎もさっきとは、打って変わって歯切れの悪い返答だった。



「海藤杏、彼女でしょ
高校陸上の次期スターは・・・」



黒板消しを持つと端からきれいにチョークの文字を消し始めた。



「中学の後輩、彼女は走らなくてもレギュラー入りだろ」



「そうでしょうけど、一人だけ特別扱いは認めないわ。
それにその実力も見てみたいしね」


「ああ、そうだな」


「じゃあ、一年生の事は私に任せてくれないかしら」


「明日・・・の事?」


「より優れた人材を素早く見極める・・・副部長の役目でしょ」


舞はクスッと笑った。