アコさんのガンが発見されたのは、偶然だった。


最近は若い女性にも乳ガンが増えてきていて、乳ガン早期発見を呼びかける「ピンクリボン運動」がTVCMなどでも宣伝されている。


しかし、まさか自分が…、と誰だって感じるだろう。


アコさんの場合は前の彼氏がしこりを見つけた。


それを聞いたリコさんは、アコさんを説得して、病院で検査させた。


そして、案の定、腫瘍がみつかった。


アコさんは


「前の彼氏やリコがいなかったら、私の病気はもっと進行していたと思う…」


と言って、泣いた。


「でも、リコ、…わたしおっぱい無くしたくない」


リコさんが予想した通りの答えだった。


若い患者さんが
「手術を受けておっぱいが無くなるくらいなら死ぬ!」と泣いてるのを何度も見たことがあった…


(命より大切なものなんてないだろ)


リコさんはアコさんに言いたかった。


でも…同じ女として痛いほど分かる…


おっぱい、大事だよな…


しかしリコさんはきつくアコさんに言いつづけた


「しっかりしろよ、アコ!まだ悪性かどうかもわかんないしこりなんだし、悪い方に考えすぎだ」


「っさいわ、あんたに何がわかんのよ?恋愛に興味ないリコにはわかんないよ!!わたし、わたしもう一生恋出来なくなるかもしんないんだよ、まだ若いのに…結婚もしてないのに!子供だって…わたし…わたし…」


リコさんはアコさんの部屋にあったカッターナイフでざくっと自分の胸の横を切った。


血が涙のようにぽたぽたと流れ出した。


「ちょっとリコ!?何やって…やだ、やだ、やだ」


アコさんは慌ててリコさんの胸の横を自分の服を脱いで押さえた。


「いってー…」


「当たり前でしょ!リコが胸切ってどうすんのよ!」

「わかんねーよ、わかんねーけど…なんで、なんでアコなのかと思ったらたまらなくて、うちなら結婚願望もないし、うちにしこり移ればいいと思って…」


「リコっ!!」


アコはリコにしがみついた。


「ゴメン…ゴメン、わたし頑張る、頑張るから二度とこんなことはやめて…」