麗奈は部屋の片付けをしながらも卓也からのメールが返ってこないことが妙に気になった


いつも休憩ギリギリまでメールしてくるのになぁ


棟上げだし忙しいのだろうとそこまで深くは考えなかった…


その瞬間風に揺れるカーテンに押されあの猿の時計が床に落ちた


まるで…


何かを知らせるかのように……




『麗奈ちゃん!!卓也が!!』


これが悪夢の始まりだった


『卓也が棟上げ中に屋根から落ちて頭を怪我して…今病院に運ばれたってお父さんが!!』



お母さんの言葉がなかなか頭に入ってこない


卓也が何??



卓也が落ちたって何??


卓也が頭に怪我?



麗奈は目眩がしてその場にしゃがみ込んだ



『麗奈ちゃん!早く病院へ行きましょう!卓也が待ってるわ』


お母さんに引っ張られ病院に向かった



嘘…


卓也が落ちたなんて



あんなに張り切って出掛けた卓也が



麗奈は涙が止まらなかった



タクシーで病院へ向かった時の記憶はほとんど覚えていない



ただ



必死に無事を祈っていた



だって…


今日は卓也との大切な記念日なんだもん…



ディナーにプレゼント…


約束してくれたもん…



きっと


『たいした事ねぇよ!おおげさだなぁ〜』


って笑ってるに決まってる…



麗奈はそう信じていた…