目の前の彼に初めて会ったのは、この学校の文化祭だ。



梨香さんを訪ねて来たのだけれど、彼女は模擬店の当番で忙しく、校内を一緒に歩いて回ることができなかった。



その代わりなのか、蒼(アオイ)先生とおっしゃる若い先生が案内してくださることになったのだけれど…。



この先生から注意を受けたことが引っ掛かって、心から楽しめる気分になれなかった。



悪いのは私だというのに、むしろ梨香さんに対して怒っていたようだった。



このままじゃダメだと思って、一緒に来ていた友人たちには先にステージ発表が行われる講堂へ行ってもらうことにし、少しだけインターバルを置いて戻ろうと思った時だった。



いきなり数人の男子に囲まれ、怖くなった私は逃げようとしたのだけれど、両腕をとられて引きずられた。



「おい、何してんだよ?」



引きずられていく先の、中から出てきた男子が声をかけた。



「あ…先輩、ちょっと話でもしようと…。」



とられていた両腕にかかる力が、少し緩んだ。



「話するのに男子便所?苦しい言い訳だな。

それはそうと、さっき同じ制服着てた子見かけたから案内してやるよ。」



そう言いながら、私の肩に軽く手を置いたのが彼だった。



早く友達と合流したかった私は、渡りに船とばかりにそれに乗った。



「じゃあ、行こうか。」



そのまま促されるように、彼と一緒になって歩いたのだけど…。



「私の友達を、どこでお見かけしましたの?」



「見てない。

大方、1人では来てないだろうって当たりをつけて喋っただけだし。

それに、どうせ待ち合わせしてるんだろ?そこまで付き添ってやるよ。」



彼について行って大丈夫なのだろうか?と、私は不安になった。