ここに来た頃はまだ明るかったのに、今は日が暮れてきている。



まさか私がここに来る前に、彼は帰ってしまったのだろうか?



門限もあることだし、諦めて帰るしかないと思い始めた時だった。



数人の男子が、談笑しながら校門に向かって歩いてきた。



その中に、私が待っていたあの方がいらした。



サラサラとした髪に、黒縁メガネの男の人。



男子の集団を前に、立ち塞がる勇気が私にあるわけもなく、通り過ぎるのをただ見てるだけ…。



声、かけなきゃ…!



だけど、なかなか声が出ない。



「おい、聖女の乙女がいるぜ。」



「梨香ちゃんに用かな?」



目の前を通り過ぎていく男子たちもみんなと同様に、私を見てヒソヒソと話をする。



そんな中、あの方は私を見て



「あ…。」



って、小さく声をあげた。



もしかして、あの時のことを覚えてくださっていますか?



ここで呼び止めなきゃ、後悔する。



頑張れ、私!!



「あっ…、あの…!」



思い切って、呼び止めた。



「えっ、俺?」



彼は自分を指差しながら、尋ねた。



私はこくこくと、首を縦に振る。



「えっと、何…かな?」



「わ…私、黄金翠子(コガネ・ミドリコ)と申します。

あの…去年の文化祭では、色々と助けていただきまして…。

えっと…私のこと、覚えていらっしゃいますか?」



「あ、うん。」



良かった、覚えていてくださって…。



「見てらんないくらい、危なっかしいし…。」



その言葉を聞いた途端、覚えてくださって光栄…だと思うのは間違いだと思った。