マリア様は溜息をついて、顔の半分を覆っていた髪を掻きあげた。



その拍子に、灰色がかった瞳が見えた。



その瞳を見て、思わず息を呑んだ。



私の様子を見て、はっとした彼女は視線を逸らすようにアスファルトに移した。



「その格好で待ってたら、ウチの学校の連中にまた声かけられるわよ?」



「あの、学園の制服に何か問題でもあるのでしょうか?」



私の言葉に、彼女は呆れかえったようだ。



「アンタねぇ、聖女の乙女っていう自覚無いの?

アンタが通ってる学校、この辺の男子学生の憧れの的なの。

あわよくば、お近づきになりたいって思う男は、うじゃうじゃいるの!」



そういう、もの…なの?



今まで、考えもしなかったことだ。



「アンタには悪いけど、帰るわ。

一緒に待っててあげられる気分じゃ、ないから…。」



マリア様はそうおっしゃると、私から離れた。



さっき、彼女が髪を掻きあげたときに気付いた。



泣き腫らした目をしていたこと。



今日、彼女もチョコレートを手に告白をして…破れたのだろう。



あんなに素敵な人を振るなんて、一体どんな相手なのだろうか?



できることなら、慰めたい。



だけど、私はまだ自分の目的を果たしていない。



私は彼女に申し訳なく思いながらも、自分の想いだけは伝えなければ…と改めて思った。



決意を新たに待ち構えていると、校門から出てくる人にまたジロジロと見られた。



マリア様がおっしゃったように、私の制服は目立つようだ。