「アンタねぇ、いつまで引っ付き虫してんのよ?」



そう言われて初めて、自分が彼女に背中にべったりくっ付いていることに気付いた。



いけない、他のお友達に見られたら「ズルイ!」って怒られてしまうわ。



私は急いで離れると、彼女に頭を下げた。



「申し訳ありません…。」



「いや、そんなに恐縮しなくて良いんだけどさ…。

リコに用事あるんなら、呼び出そうか?」



「私が待っているのは、梨香さんでは…ありませんの。」



手提げのバッグを、ぎゅっと握りしめた。



マリア様は、その中身に気付かれたようで



「男子?私の知ってる奴なら、呼ぶよ。」



と、おっしゃってくださった。



ありがたい申し出なのだけど、残念なことに…。



「お名前は、存じ上げません…。」



車の中から見ているだけの私に、周囲の言葉から知る機会など与えられるわけがない。