『聖アグネス女学園』



幼稚舎から大学まで揃ってるお嬢様学校なだけあって、デカイ門扉にはゴツイ警備員。



ちょっと中を窺ったりウロウロ歩き回ったりしようものなら、警察に通報されそうだ。



とりあえず、道路を挟んだところで警備員に見える場所を選び、待つことにした。



警備員にジロジロ見られるのは嫌だが、見えないとこで待ち伏せしたら余計に怪しい奴だと思われそうだからなぁ。



1人の警備員がこっちに向かってこようとするのを、もう1人が宥めてるカンジだった。



今日がホワイトデーで、花束と可愛い紙袋を持ってたから、見逃してくれたんだと思う。



放課になったのか、生徒が帰りだした。



高等部の生徒に翠子を呼び出してもらおうと思ったけど、中等部と区別がつかねー!



何か違いがあったはずなんだけど、思い出せない。



っつーか、黒塗り車の出入も激しいし…。



翠子だったら、絶対車だよな。



俺は、車に乗ってる子を確かめるように見つめた。



それにしても、警備員だけでなく校門から出てくる女子の視線も痛い。



翠子も、1ヶ月前はこんな思いしたんだよな…。



しかも絡まれてたっていうから、怖かったよな。



そんな思いしてまで告ってくれたのに、俺は真相を確かめもせずに切っちまったんだ。



ゴメン、翠子。



ちゃんと謝りたい。



たとえ、許してくれなくても…。



このプレゼントを渡すチャンスだけは、逃したくない。



その想いが通じたのか、翠子を見つけた。



しかも車じゃなく、校門に向かって歩いていた。



あのヤな野郎に阻まれる心配がないのは、ラッキーだ!



「翠子ーっ!」



俺はありったけの声で彼女を呼ぶと、校門に向かって走った。