翠子と絶交して、1週間が経った。



昼休みの教室でため息をついていると、悪友たちが



「とうとう、聖女のお嬢様に振られたか?」



なんて、傷口を抉るようなことを言ってくれる。



「はぁー…。」



俺はもう一度ため息をつくと、机に突っ伏した。



「……る、…ぐる。」



ん?



バシッ!!



「痛ってぇ…何だよ!?」



頭をさすりながら見上げると、叩いたのは花見だった。



「何だじゃない、客。」



「呼べば良いじゃん…。」



「タク、5回はお前のこと呼んでたぜ。」



周りの奴が、笑いながら言った。



そうだったのか、それは…



「スマン。」



それを聞いた花見は、苦笑していた。



教室の前で待っていたのは、学校一の才媛と言われてる書道部の後輩。



1年の終わりに強制させられて入った部活だから俺は幽霊部員だけど、彼女は週1の部活どころか自主練までしてる。



そうやって努力してるから部員の中でも一番字が上手く、部活の顧問に可愛がられてる。



口の悪い奴は『愛人』って言うけど、オッサン相手じゃちょっと可哀想なくらいだ。



普段関わることがないような子が来たってことは…、まさか告白?



俺って、今モテ期?



この子には悪いけど、俺の中から翠子が消えたわけじゃない。



「坂下の子飼いが、何の用?」



「“坂下先生の囲い女”って、はっきり言えば?」



「それ、噂だろ?」



自分の目で確かめてないことを、面白おかしく喋る気にはなれない。



「校門に先輩を訪ねてきた人がいるの、呼んでって頼まれた。」



そうだよな、俺がモテるわけない。



「どんな子だった?」



翠子?って逸る気持ちを抑えて聞いた。



「大学生くらいの、頭軽そうな男の人だった。」



…誰だよ?