今日は、なんていい日だったのかしら。



優さんが、震える私の手を握ってくださり…



ピアノを習い続けていることを、褒めてくださり…



また会う約束まで、してくださった。



嬉しいことばかりだったから、こうして帰らなければならないことを恨めしく思った。



いいえ、恨むなんていけないことだわ…。



それよりも、楽しいことを考えましょう。



例えば、次に優さんと会った時に話題にすること…が良いわね。



優さんにはお姉さまがいるとおっしゃっていたけれど、他にご兄弟はいらっしゃるのかしら?



私はひとりっ子だから、羨ましいって思う。



今度会った時、兄弟姉妹がいるのはどんな感じなのか聞いてみましょう。



ところで、次はいつ私と会ってくださるのかしら?



来週末はピアノの発表会があるから、それより前では今日と同じことになってしまう…。



そうだわ、発表会に来ていただけるようにお願いしてみましょう。



私は早速、携帯電話を開いてメールを送った。



とはいっても、普段はメールを使わないので、みんなと比べてスピードが遅い。



それに対して、優さんはすぐに快諾の返事をくださった。



しかも、ガンバレ!って書かれていた。



最近伸び悩んでいて辞めようと思っていたピアノだったけれど、こうして優さんが応援してくださるのだから頑張れる!



早く発表会にならないかしら?



可笑しいわね、発表会が楽しみだなんて…。



浮き足立っていたからか、車の中に携帯電話を置いたままだったことに気付かなかった。



レッスンの後に、先程迎えに来た使用人が届けてくれるまで…。