「はぁ?ふざけんな!返せよ!!」



「いいじゃん、ケチ!」



ケチって言われる筋合い、無ぇし!



「何を騒いでいるんだ?外まで聞こえるぞ…。」



親父が、会社から帰ってきた。



「姉貴が、俺の物を勝手に取り上げたんだよ。

ってか、マジ返せ!」



「味見くらいさせてよ!」



「姉貴が味見で済んだ例、無いだろ!」



お袋から詳細を聞いたのか、親父が割って入った。



「秀美(ヒデミ)いい加減にしないか!

それは優のものだ、相手の女の子の気持ちも考えなさい!

そんなにチョコレートが欲しいなら、買ってやるから…。」



「お父さん、マジ!?

それと同じものにしてね!」



親父は携帯を取り出すと、俺が手にしたチョコのサイトを探しだした。



数分後…。



「はぁっ!?」



親父の、素っ頓狂な声が響いた。



何だろ?って思いながら、携帯を覗く。



そして、俺は両手に納まった箱に視線を向けた。



この両手にすっぽり納まったチョコが、ゆうに5,000円を超える値段って…。



恐るべし翠子、どんだけお嬢だよーっ!?



親父は携帯を持ったまま、固まってた。



「親父、このチョコみんなで分けるからさ、買わなくて良いよ。」



こんな高いチョコ、お袋や姉貴の羨望の眼差しを浴びながら食ったら、消化不良起こしそうだ。



いや、むしろ今日の夕飯ですら消化不良になるんじゃ…と疑問になった。



「スマンな優、甲斐性無くて…。」



甲斐性とかの問題じゃない…。



親に養って貰ってる分際で、こんなチョコ買える方が間違ってる。