「フゥ…」
先輩は大きく息を吐いた。
白くなった息が、秋から冬に近づいていることを知らせる。
「もしあのバレンタインの日…部室で佑月と会えてたら、どうなってたんだろな。」
「え?…どうなってたって、私がスパッと振られてるだけですよ。」
そんなの決まってるじゃないですか、
あの時、もし先輩にチョコを渡せたとしとも…好きですって告ってたとしても…
結果は、失恋だった。
だって先輩は私のこと後輩としか思ってなかったし、
今より太ってて、男子に女として扱われなかった私が先輩に好きになってもらえるはずなかった。
だから、どう転んだって私の先輩への恋は片想いで終わってた。
「…フッ、どうかな。」
「え?」
「いや、何でも。さて、帰るか!送ってく。歩きだけど。」
伸びをしながら、立ち上がった先輩。
そういえば、先輩ってバイクじゃ…
「先輩、バイクは…?」
「あ~あの店の駐車場だけど、ま、あの黄色いバカ頭にもって来さす!」
そう言って、スタスタと歩き出した先輩を慌てて追いかける。
背が高くて、足の長い先輩は歩幅が大きいから…すぐ私はおいてかれる。
なんか、懐かしい。


