「う、うわああああ。」
あまりの狂気に声を上げる。野次馬はもちろんだが、何人か警官もそうだった。
「おい、野次馬をどうにかしろ。」
山本が叫んだ。
「凶器を所持しているってわけじゃないんだ。一斉に取り押さえろ。」
香川が指示をする。
「は、はい。わかりました。」
と言うものの、皆腰が引けている。格好こそ人のそれだが、振る舞いはとても人のそれとは思えない。鬼神がこの世に現れたとしか思えない。
「早くしろっ。」
もう一度、香川が言うが同じだ。
「く、くそ。」
香川は一人、男に立ち向かった。
男は拳を振り回す。それが香川の顔をかすめた。少し触れただけだ。なのに、この痛みは尋常でない。叫んだ。あまりの痛みに叫んだ。
「か、香川・・・。」
香川の姿を見ていた山本のところに無線が入った。発砲許可。普通ならあり得ない連絡が山本に届いた。それだけ事態は異常なのだ。
脇から拳銃を取り出す。そして、天に向かって発砲した。これは威嚇の意味でだ。これで取り押さえる事が出来るなら、それに超した事はない。が、山本の思いとは反対に、それは男にとっては宣戦布告と取られたようだ。頭を右に傾けた。そして前屈みになった。獲物を捕獲する前の準備に見えた。
その目で睨まれると、さすがの山本も恐怖を覚えずにはいられなかった。今まで何人もの凶悪犯と対峙してきた。しかし、一度も臆した事などない。その山本が怯える。一番近い感覚は腹を空かせたライオンの檻に放り込まれた感じだ。ライオンに罪悪感はない。殺すのは本能。生きるための本能。打算的なものは一切ない。だからこそ、死を現実に感じてしまう。
あまりの狂気に声を上げる。野次馬はもちろんだが、何人か警官もそうだった。
「おい、野次馬をどうにかしろ。」
山本が叫んだ。
「凶器を所持しているってわけじゃないんだ。一斉に取り押さえろ。」
香川が指示をする。
「は、はい。わかりました。」
と言うものの、皆腰が引けている。格好こそ人のそれだが、振る舞いはとても人のそれとは思えない。鬼神がこの世に現れたとしか思えない。
「早くしろっ。」
もう一度、香川が言うが同じだ。
「く、くそ。」
香川は一人、男に立ち向かった。
男は拳を振り回す。それが香川の顔をかすめた。少し触れただけだ。なのに、この痛みは尋常でない。叫んだ。あまりの痛みに叫んだ。
「か、香川・・・。」
香川の姿を見ていた山本のところに無線が入った。発砲許可。普通ならあり得ない連絡が山本に届いた。それだけ事態は異常なのだ。
脇から拳銃を取り出す。そして、天に向かって発砲した。これは威嚇の意味でだ。これで取り押さえる事が出来るなら、それに超した事はない。が、山本の思いとは反対に、それは男にとっては宣戦布告と取られたようだ。頭を右に傾けた。そして前屈みになった。獲物を捕獲する前の準備に見えた。
その目で睨まれると、さすがの山本も恐怖を覚えずにはいられなかった。今まで何人もの凶悪犯と対峙してきた。しかし、一度も臆した事などない。その山本が怯える。一番近い感覚は腹を空かせたライオンの檻に放り込まれた感じだ。ライオンに罪悪感はない。殺すのは本能。生きるための本能。打算的なものは一切ない。だからこそ、死を現実に感じてしまう。


