鮫は獲物が数キロ以内にいる事を聴覚で聞き取れると言う。大伍もまさにそれだった。一度も訪れた事のない街で、獲物に目掛けて一直線に歩いていた。ただ、後をつける山本、香川にはそれを知る事は出来ない。どちらかと言うとその歩き方から、宛もなく街を彷徨っているように見えた。
「あいつ、どこに行くんですかね?」
「どこだろうな?ただ、あの覚束ない歩き方見ろよ。とても目的があって歩いているようには見えないぞ。単に公園にいるのが飽きたとか、そんな類じゃないのか?」
「ですかね・・・。」
付かず離れず、絶妙な距離をおいて後をつける。刑事なら出来て当然の芸当だ。ただ、相手が大伍と言うのがいけなかった。大伍は人を油断させるのだ。それ故、人の能力を百パーセント引き出させない。
ゆらり、ゆらり、左右に肩が揺れる。そして、その揺れを利用し左に曲がった。それは波に貝殻がさらわれるような、あまりにもきれいな事象だった。人混みという事も手伝って、完全に大伍を見失った。
「どこに行った?」
「さっきまで、そこにいましたよね?」
慌てて少し先にある交差点まで走る。右、左と確認するが、もう大伍の姿は見えない。山本は頭を抱えた。
「うわぁ、村上さんになんて言ったらいいんだ?」
言い訳のしようがない。
「ですね。」
どちらかと言うと香川は他人事のようだ。それもそうだ。今回の指揮は山本が執っているのだから。心のどこかではむしろ山本の失敗を喜んでいるかもしれないくらいだ。
太陽が雲に隠れる。山本の心も天気と同じように、どんよりと曇り始めた。
「あいつ、どこに行くんですかね?」
「どこだろうな?ただ、あの覚束ない歩き方見ろよ。とても目的があって歩いているようには見えないぞ。単に公園にいるのが飽きたとか、そんな類じゃないのか?」
「ですかね・・・。」
付かず離れず、絶妙な距離をおいて後をつける。刑事なら出来て当然の芸当だ。ただ、相手が大伍と言うのがいけなかった。大伍は人を油断させるのだ。それ故、人の能力を百パーセント引き出させない。
ゆらり、ゆらり、左右に肩が揺れる。そして、その揺れを利用し左に曲がった。それは波に貝殻がさらわれるような、あまりにもきれいな事象だった。人混みという事も手伝って、完全に大伍を見失った。
「どこに行った?」
「さっきまで、そこにいましたよね?」
慌てて少し先にある交差点まで走る。右、左と確認するが、もう大伍の姿は見えない。山本は頭を抱えた。
「うわぁ、村上さんになんて言ったらいいんだ?」
言い訳のしようがない。
「ですね。」
どちらかと言うと香川は他人事のようだ。それもそうだ。今回の指揮は山本が執っているのだから。心のどこかではむしろ山本の失敗を喜んでいるかもしれないくらいだ。
太陽が雲に隠れる。山本の心も天気と同じように、どんよりと曇り始めた。


