誰かが肩を叩いた。
「大丈夫ですか?」
軽く揺すられた。揺すっていたのは傷の男だ。
「えっ・・・。」
どうやら大伍は眠ってしまっていたらしい。オレンジ色が大伍の視界を染めた。
「何かうなされていたようですが・・・。」
男にそう言われて、やっと大伍は自分が眠っていたと理解した。
「あ、あぁ・・・すみません。仕事中に眠っちゃって。」
「いえ、仕事の時間は終わってます。今日も本当にご苦労様でした。」
仕事はあくまでも夕方までとしか言われていない。今は五時を少し過ぎたところだ。男が終わっていると言うのだから、終わっているという事でいいのだろう。大伍はホッとした。いくら簡単な仕事だと言っても、仕事中に眠ってしまうのはあり得ない。そうではなく、仕事が終わってから眠った事に安心した。
「はい、今日の給料です。」
二万円渡された。今日はいつもより少ない。しかし、それよりも気になる事があった。男の取り出した財布だ。紫色の財布なのだが、どう見ても男の持つデザインではない。それに何故か見覚えがある。思い切って大伍は聞いてみた。
「あの、その財布は・・・。」
「この財布がどうかしましたか?」
男は至って冷静だ。
「いや、こんな事言っていいのかな?」
「どうぞ。」
そう言われれば遠慮することもないだろう。
「その財布って・・・女物じゃないですか?」
「そうですか?」
「はい、何かリボンのような飾りもついてるし・・・。」
「あの大根好きですか?」
唐突に話が変わった。