中学まで大伍は優秀な生徒の一人だった。生徒会長を務めた事もある。おかしくなったのは、高校に入ってからだ。そこから歯車が狂いだした。
大伍の入学した高校は、某大学の付属高校だった。そこは幼稚園からエスカレータ式にあがれる大学だ。簡単に言えばお坊ちゃん学校と言ってもいい。成績が優秀だった大伍は、担任の薦めもあり、そこを受験し合格した。そこが人生最後の華だった。
中学の時と同じように学年の首位を歩んでいく。そう思い続けていた大伍は愕然とした。知識の隔たりがすごいのだ。とくに幼稚園からずっとその学校にいる者。その者達の知識レベルたるや、何が違うのか理解できないほどだった。
「な、なんで・・・。」
部屋で悔しさに打ちひしがれ泣いた事もある。しかし、それも一瞬だった。諦めたのだ。どうやっても乗り越えられない壁。それなら乗り越えるのを止めよう、そう思ったのだ。付属高校だから、なんとか大学には入れたがそんな精神状態で馴染めるはずもない。大学を辞めるのに勇気はいらなかった。この苦痛から逃れたい、ただその思いだけが大伍を突き動かした。
そして、今ここにいる。