一総は、無心で笛を吹いた。 雲雀の飛翔の様に高く低く流れる笛の音は、淵の水面を震わせ萎れかけた野辺の花に命を蘇らせた。 “一総じゃ…一総が来たぞぉ。” “一月ぶりの笛だが…相変わらず音に濁りが無いのぅ。” 一総の耳に、笛の音に混じり複数の小さな声が届いた。 その声は、徐々に数を増し渦のように彼を取り囲んでいった。 ざわざわ…。 わさわさ…。 “一総、雲雀も良いがワシは風笛楽が聴きたい。” 辺りで蠢く多くの気配の一言に、彼は静かに唇から笛を離した。