-梅兼の誘い-

翌朝、焔は彼女の名を呼ぶ真白の声で目を覚ました。


「おはよう、焔。」

真白は手際よく夜具を片付けながら、半身を起こしたまま未だ夢心地の表情をしている焔の顔を見つめやんわりと微笑んだ。
その笑顔を見つめながら、焔は夜の出来事を思い出していた。


「おはよう、真白。すっかり寝過ごしてしまったな。」

焔は、えいっと気合を入れ起き上がると真白と共に夜具を片付け始めた。


「ねぇ、真白。ここの納屋に古い農具がないか?」

「古い農具?そうねぇ……。ああ、そういえば私が子供の頃から使っている鍬と鋤があったはず。それがどうかしたの?」

焔は、紅で模様が描かれた木枕を部屋の隅に並べながら真白の問いに答えた。