-花の里-

二人が廣川の庄に着いたのは、戌の刻を過ぎた頃だった。


庄の灯りが目にもはっきりとわかる所へ差しかかった時、その方角からチラチラと二つの松明の灯りが近づいてくるのが見えた。
灯りの主は、真白の父と畑番(はたばん)の男だった。
真白の帰りがあまりに遅いので、父は居ても立ってもおられず畑番を伴い彼女を迎えに出たのだった。

思わず駆け寄る真白の顔を覗き込み、彼女の父はホッと安堵し漸く口元を緩めた。