「それはそうと…真白、ここに来てから随分時間が経つが…帰らなくて良いのか?」

焔は、話を変える様に真白に訊ねた。


真白は、彼女の言葉に驚き辺りを見た。
いつの間にか、薄墨を流したような宵闇は、漆黒の闇に変わっていた。


「ああ、いけない…。」

真白は慌てて両腕に抱えていた花の枝を橋の下の流れに投じた。



ぱしゃっ
とぷとぷ…

川を流れる花達を見送りながら、彼女はそっと手を合わせた。



「さぁ、真白…帰ろう。庄の近くまで一緒に行くから…。」

焔は、なかなか動かぬ真白の衣の袖をそっと引いた。