これは…川面に浮かぶ屍の匂いか…。 焔が人であった頃、屍の匂いはそこかしこに漂っていた。 そうであったから…彼女にとって川面から立ち上る匂いは懐かしいものでもあった。 「…ん?」 焔は腐臭の中に、違う香りを嗅ぎ分けぼんやり眺めていた川面から面を上げ辺りを見回した。 「これは…蝋梅の香りだ。」 焔は呟くと、微かに漂う蝋梅の香りの先に視線を向けた。 “きゃっ…” 透かし見る薄墨色の闇の中から若い娘の小さな悲鳴が聞こえた。