夕刻-箕舞(みすまい)の町-


箕舞の町は、先程までの雷鳴が嘘の様に静まりいつもと変わらぬ夕暮れの刻を迎えていた。
雷雲が去った西の方角は、群青の帯が一筋流れる宵の空に日没の残照が最後の輝きを映していた。
あの光が地に沈めばやがて闇が降りて来る。


人気がめっきりと減った薄暗い通りを、一人の娘が急ぎ足で歩いていた。
娘は、急いでいた足を不意に止め西の空をチラリと見上げ深い溜息をついた。


急がなくちゃ…。


娘は、そう独り言を言うと再び足を早め町を流れる川に架かる橋を目指した。