「焔、お前はその眼力を疎ましく思うことはないか?時には今日の様に命を落としそうになる時もあるのだぞ?」

「私は…この眼でいろいろな物を見てみたい。そして、誰かの為に力を使いたい。だから気持ちに迷いはない。」

焔の言葉を聞き、一総は己の胸中に立った小さな漣に戸惑い、思わず直垂の合わせを堅く握り締めた。


焔…お前も力を使うことは己の務めだと言うのか。潔いな…。


彼は、心の中でそう呟くと、再び空を見上げている焔の強い意志の宿った横顔を見つめた。



ちり…ちりり…。

一総は、彼女の中に灯る小さな炎の幻影を鬼面を透して見た様な気がした。