鬼神の舞


一総は、二人の会話には加わらず女達が差し出す酒器を受け取ると手酌で杯を傾けていた。


「一総様、膳には手をお付けになられていないようですが…。」

梅兼が彼の脇ににじり寄り低い声で言った。

「梅兼、私にこのような膳は必要ないと…いつも言っているではないか。」

一総は、低く言うと鬼面の下から梅兼の顔をジッと見据えた。


「昼間、子供達から…茜が死んだと聞いた。私はこの庄に通って長いがここが決して豊かではない事を知っている。」

「…。」

彼の言葉に、梅兼は深く頭を垂れた。

「見知った者が異界の住人になるのは辛い。この膳は、庄で病に伏している者がいるならば後でその家に届けてくれ。私はお前達のもてなしの気持ちだけで充分だ。」

「一総様…。」

顔を上げた、梅兼の瞳が灯明の灯りを反射してキラリと光った。
畑頭として、庄を纏める彼にとっても仲間の不幸は辛く悲しい。
ましてや、未来ある幼い者が飢えや病で死んでいく事は耐え難い事であった。