鬼神の舞


“うわぁぁぁ、一総、おらが悪かった!頼むから腕を返してくれぇ!”

「うるさい!今回の悪戯は度を過ぎた。こいつはほとぼりが冷めるまで俺が預かる!」

一総は、河太郎を怒鳴りつけると一本に繋がった水鬼の腕を肩にくくり付けた荷の中に放り込むと、彼を睨みつけ踵を返した。
一総の怒りの感情の宿った無言の広い背は、水鬼の過剰な悪戯心を萎えさせるには充分の効目があった。


“うわぁぁぁぁん”

とうとう河太郎は、童の様な鳴き声を残し水路に消えていった。



まったく、困った奴だ…。

一総は、肩で大きく息をすると腕に抱きかかえた焔の体を下草の上にそっと降ろした。
こうして抱くとまるで重みを感じないこの娘の体の何処に、先程の怪力が宿っていたのだろう。
彼は、青ざめた焔の顔をじっと見つめた。


この娘も…俺と同じ力を持つ人間なのか?

視線は、河太郎に掴まれた両手へ移る。
その、まるで火傷を負った時のように爛れた傷を見て彼は首を傾げた。