鬼神の舞


「何て事だ!焔、急いで畑へ降りろ、蹴られれば死ぬぞ!焔…」

一総は叫ぶと、焔の手首を掴み彼女を畑に連れ出そうとその体を引いた。
しかし、彼は後に続く言葉を呑み込んだ。
焔の体は、その場に根でも生えたかの様に動かなかった。


「焔!」

「大丈夫だ。私が馬を止める!」

焔は、迫り来る馬から視線を逸らさぬまま凛とした声で答えた。
その様子に、一総は首を振り更に大声で怒鳴った。


「駄目だ、そいつは只の暴れ馬じゃない!そいつは…。」


どどどっ
どどどどどっ

焔を救おうと手を伸ばした一総の目の前を、凄まじい勢いで葦毛の馬が走りぬけた。



後には、庄民の悲鳴と濛濛と舞い上がる砂塵が残された。