「…一総様、ありがとう。」
焔は、膝を揃え座り直すと一総に向かって深々と頭を下げた。
「…。」
一総は、口の端を少し上げ微笑むと黒鳶を錦の袋に入れ荷物の中に仕舞った。
そして、立ち上がり袴に付いた埃を払うと大きく伸びをした。
「さて、陽も高くなった…庄士殿も目覚める頃だ。私は離れへ戻るぞ。」
「あっ、それじゃあ私も…。」
一総は頷くと淵の土手を登った。
その後ろに焔が続く。
「焔、足元に気をつけろ。」
差し伸べられた大きな手を、彼女は躊躇無く握った。
ちちっ、ちちちっ
美しい鳥の囀りに二人は声の方角を見やった。
「瑠璃鶲だ…。」
「あの鳥は…魂を天に運んできたんだな。」
一総の言葉に、思わず焔は答えた。
「ん?」
「ああ…、いや、そんな例えを聞いた事があるんだ。」
焔はそう答えると彼に白い歯を見せて笑い、足取りも軽く畑道を歩き出した。


