妄想ホワイトデー《短編》

「ちょっと、それ貸して」


俺は歩ちゃんのネームプレートに白いビニールテープを貼ると、マジックで字を書いた。



『俵山 米子』



「………何これ」



「今日から歩ちゃんは、バイト中は俵山米子という名前だから」


「…は?なんで?」


「なんでって…。またさっきみたいに変な男にからまれてもいいの?」


「それは困るけど、別に名前くらい…」



笑っている歩ちゃんに、俺は真剣な顔で言った。