妄想ホワイトデー《短編》

3月14日の朝が来た。


俺は目覚まし時計のアラームが鳴ると同時にボタンを押した。



一晩中、眠れなかった。





身体がだるくてしょうがなかったが、このまま眠れそうもないし、いつも通り自転車をこいで学校へ向かった。


菊地の姿を見つけると自転車を降り、無言で隣を歩いた。


菊地があくびをしながら言った。


「歩ちゃんと、仲直り…した…?」


「してない」


「どうして…?」


「だってさ。電話はきたけど、聞くのが怖くて切っちゃったから」


「ふ〜ん…」


菊地は俺をチラリと見た。


「なんだよ」


「自信ないんだ…歩ちゃんが…お前を好きだって…信じられない…?」


「…。もう、ほっといてくれよ」




俺は、菊地みたいに女の子にもてるわけじゃない。


自信なんて…あるわけないよ。


俺なんかより…他の男を好きになってもしょうがないから。