憂鬱な姫君 (姫シリーズVol.5)

その中にあるのは、幼い自分とジョーをそれぞれ膝に乗せたパパとママ

ふたりに挟まれるように座っているレン兄の家族写真だった

「本当に、ここに来た事があるんだ・・・」

その写真はここで撮られたものらしい

ココはそのままテラスに出て行く

テラスの天井からかかっているベンチタイプのブランコ

「ここで撮ったんだ・・・」

写真の中のみんなはこの場所に座って、みんな笑っていた

ココが座ると、少し揺れたベンチ

その揺れが心地よく、ココはベンチに座り何をするでもなく、ボーっと時間を過ごしていた

「寒ッ!!!」

気がつくと辺りはすっかり暗くなっていた

あまりに心地よく、いつの間にか眠ってしまったようだった

ココは慌てて立ち上がり、家の中へ入る

そして、開け放ったままの家中の窓を閉めて周り、玄関先に停めておいた自転車にまたがった

「あ~マズイ!! 真っ暗だよ・・」

昼間の明るい時間でもやっとたどり着いた家なのに、暗い中、ホテルまで戻る自信がなかったココだが、躊躇していても仕方ないし・・と帰りの道を確認しようとポケットの中の地図を探る

「あれ?」

デニムのポケットに押し込んだはずの地図がない

右のポッケ 左のポッケ おしりのポッケ・・・

全てのポケットを確認しても、地図は入っていなかった

「嘘でしょ・・・」

ココは目の前に広がる見慣れない風景に一気に顔が引きつっていくのだった