憂鬱な姫君 (姫シリーズVol.5)

レンタサイクルにまたがり、ココは赤土の道を走る

左手に広がるコーヒー畑

右手に移る太平洋

手書きの地図を片手に、ココは無心でペダルを漕ぎ、迷いながらも着いた先は一軒家

そう、姫花と廉が住んでいた家だった

数年間は貸し別荘として、他人に貸してきたが最近は年に数回、廉がオフに波乗りに来る以外は使われていなかった

ココは廉に

「時間があったらでいいから窓開けて空気の入れ替えだけしてきてくれないか?」

と鍵を渡されていたのだ

3,4歳の頃にココとジョーも来た事があるらしいが、そんな幼い頃の記憶はまったくなく、ココにとっては初めて来るも同然だった

ガチャ

もらった鍵で開けたドアを恐る恐る押してみる

カビの臭いと埃っぽいよどんだ空気にココの顔がゆがむ

カーテンをいっきに開け、そのまま窓を開ける

「ふぅ~」

思わずココからもれるため息

家中の窓を開け放ち、やっと部屋の中を見渡す余裕のでたココ

壁に掛かっている家族写真が視界に入った

ほとんどがママとレン兄のものだったが、パパとのスリーショットもある

ビーチでがっくんやりんさんと写ってるのもあるし、咲さんに抱かれた赤ちゃんはマキちゃんかな?

ココは興味深げに一枚、一枚の写真を見ていた