憂鬱な姫君 (姫シリーズVol.5)

ママが座ると、がっくんはすぐにママの前にグラスを置く

ママの大好きなトマトジュースだ

「サンキュー」

もう20年以上前からのお気に入りのトマトジュースは、好きが高じて数年前にこのトマト農場を買い取ってしまった程だった

私を連れに来たのかと思っていたけど、カウンターに座ったママは全然帰るそぶりをせず、がっくんと話してばかり・・

私は、ふたりの話を聞いてもよくわからないので、カウンター席を離れ、ソファにもたれながら、壁一面の熱帯魚の水槽を見ていた

「ココー アニキにお小遣いもらったから、買い物行こう?」

振り返ると、手に握られている黒いカード

現金をもらったわけでもなく、財布を渡されたわけでもなく、黒光りするカードをもらったママ

その後ろで苦笑いのがっくん

「な~んか、超ラッキー 来月車検だし、買い換えようかな~?」

なんて暢気にエレベーターに向かっていくママからがっくんに視線を移すと目があった

私の視線に気付いたのか

「ココも何でも好きなもん、買っていいぞ?」

とがっくんは笑ってくれたけど・・・

きっとりんさんに怒られるんだろうな~と思いつつ、ママの後を追って急いでエレベーターに乗り込んだ