憂鬱な姫君 (姫シリーズVol.5)

「もらうよ」

潤也は名残惜しそうに姫花を離し、椅子に座った

「ココ、浮かない顔してるな? 」

潤也の目はココを捕らえる

「・・そう?」

潤也の目を見ようとしないココ

「今を楽しめよ・・ 同じ日は二度と来ないぞ?」

ココは潤也をチラッと見た

潤也は、そんなココに笑みを見せ、姫花が運んできた朝食に手をつけだした

いつも母親にベタベタしている父親だったが、核心をついたようなことをパッと言うので“あなどれない奴”だと改めて思うのだった

「ご馳走様・・」

手を合わせ、空になった食器を下げるココ

「おわっ! 待てよ! もう行くのかよ?」

と置いてかれまいと慌てるジョー

「ココ、今朝は時間があるから送っていく 」

ココの背中にレンの言葉が投げかけられる

「え? なんで?」

「時間があるから・・ね」

いつもの時間の電車に乗るにはもう出ないと間に合わない

でも、車ならそんなに急がなくても大丈夫

「通勤時間に引っかかるから、多少は渋滞してるだろうけど、首都高抜ければたいしたことないだろうし・・ ゆっくりお茶でも飲んでいきなさい」

と姫花がリビングに日本茶を持ってきたので、ココは大人しくソファに座り、お茶をすすったのだった