「ね、早く見に行こう?」

北斗を避けるようにココはブライアンを促す

「え? あ、あぁ・・・」

ブライアンは北斗を気にしつつ、ココに手を引かれるように会場の中に入っていった

会場には、ココがアトリエで見たことのあるものや、初めてみる作品、そして・・・ココの写真もあった

「この被写体、綺麗だね・・」

ココだとは気付いていないブライアン

「え? そう? 私はこの空の色と海の色が好きかな・・」

「あぁ・・ わかるかも・・」

ふたりは一枚、一枚ゆっくり眺めていく

「次、行こう?」

ココがブライアンの手を引くが、ブライアンが動こうとしない

「どうしたの?」

一点を見ているブライアン

その視線の先には、照明に照らされたココのアップ写真があった

今より少しだけ幼く、大きなつばの麦藁帽子をかぶり、風で顔にかかった髪をとっているカメラ目線のココ

この写真を見るのは初めてだった

「あ・・・」

ブライアンはココの手を離さないまま、その写真の方へ惹きよせられるように歩いていく

カツ、カツ・・・

少し騒がしい会場内なのに、ココの耳にはブライアンの靴音しか聞こえてこなかった