「実は…さきほど目撃したんですが」
山崎先生は声を潜める。
そして誰もいないことを分かった上で周囲を確認。
「中川先生が…橋野先生をデートに誘ってました」
『…………彼ですか』
思わず溜め息。
中川徹平
奈々の同期で俺と同じ理科の教師。
生徒達は気さくな性格の中川先生を慕っているが
俺はどうもスキになれない。
ついでに言えば涼も山崎先生もあんまりスキじゃないらしい。
どこがキライとか
どこが気にくわない、とかはとくにはない。
まあスキじゃない理由の大部分は俺の嫉妬のせい。
だって中川先生が奈々に恋心を寄せているんだから。
『……で、奈々の反応は?』
そして、1番問題なのは
「……まあ用がある、って一応は断ってましたよ」
言い寄られてる本人、奈々に自覚がないことだ。
アイツはそういうのにホントに疎い。
だから中川先生が自分に好意を持ってることにこれっぽっちも気づいてない。
ここが、1番心配なんだ。
自分がどれだけモテるのか、もう少し自覚を持って欲しい。
彼氏的には。


