『もう少しの辛抱だ。
卒業式が終われば今よりはもっと時間が作れると思うから』
そう奈々に言ってみる。
事実、卒業式のギリギリに公立の試験がある。
それが過ぎて、卒業式が過ぎればあとは多分…楽になるはずだから。
「うん…そうだよね…
頑張るよ、私。
優作も頑張ってね」
そう言って奈々は電話を切る。
リビングに戻ると
『また奈々ちゃんと電話ー?
うらやましいなぁー』
なんて涼のひがみが飛んでくるのも毎度のこと。
『涼だって電話する相手、いるだろ?』
半笑いでそう言うと
『そんな相手いないことくらい、優作が1番知ってんだろ?』
と、睨まれる。
『いるだろ、1人。』
『誰だよ?』
『………山崎先生』
そう言うと涼は少女のように顔を赤くする。
ホント、乙女だな、涼って。
この間まで女泣かせの童顔野郎だったのに。


