「そんなこと…言ったら…もう…」
膝の上で握られた奈々の拳が震えていた。
そこに、涙が零れる。
なんで…泣いてんだよ
そんな姿見せられて…耐えれるほど俺…大人じゃねぇーんだよ
俺の左手が奈々の肩を抱く。
「やめて…やめてよ…お願いだから…」
奈々が俺の手から逃げようとする。
「お願い…離して…」
あまりの拒否に俺はゆっくりと腕を戻す。
「ごめん…なさい…泣いたりして。
もうここで…大丈夫…だから…」
最後にありがとうございます、と言った奈々は車を降り、走って行った。
微かに車の中に香る、奈々の香水の匂い。
それが俺の胸を締め付ける。
どうして…泣くんだよ…奈々


