――やっぱり、帰ろう。



きっと、このまま柊二に会ってもまたケンカになるだけだ。



「カズさん、アタシ……」


「梓ちゃんはあそこだろ?」


アタシが動かなかったのをカズさんはどう捕らえたか分からなかったけど、さっきと同じように強引にアタシを引っ張って一席だけ空いていた一番奥のカウンター席に座らされた。


ここは柊二の持ち場で、特等席。


いつものアタシの限定席。


フッとテーブルに目をやると、一枚の紙が置かれていた。



―reserved seat―



予約席?


じゃぁ、ダメじゃん。


アタシが立ち上がると、愛しい人の手でそれが取られた。



「どうぞ」