「ごめんな、今日、ムリヤリ柊二とバイト変わってもらって……」
「え?」
それ、どういうこと?
「実はさ、今日、こいつにプロポーズして……」
「うそっ! カズさん、結婚するの?」
「まぁ……な」
と、今までに見たことのないくらいの笑顔で彼女に笑いかけてるカズさん。
彼女の薬指に光る指輪が幸せを物語っていた。
「そうなんだ……おめでとう!!」
こんな幸せな話が聞けるなんてうれしくなる。
「ありがとな。柊二ももうすぐバイト、終わりだろ? それまで中にいたら? 寒くない?」
「あ、うん……」
言葉を濁すように返事をすると、カズさんがアタシの顔を覗き込んできた。
「……何かあった?」
「いや、別に……って、ちょっと……」
フワッと傘が浮いて、アタシはカズさんの手によって店の中に入れられていた。

