「一体、どこに行ってしまったんだろうねぇ」


奈緒子さんはコーヒーを飲みながら、ため息をついた。




ヒカルはもうこの街のどこにもいないだろう。


どこか遠い所に行ってしまったのだろう。


あたしは心のどこかで、いつかまたヒカルと付き合えるのではないかと、淡い期待を抱きつづけていた。


けれどもそんな期待があったのは、ヒカルが近くにいたからだった。


いつでも会える距離にいたからだった。


でも今はもう、ヒカルに連絡することもできない。


会いに行くこともできない。


遠くから見ることさえ叶わない。