ここは、オレンジがかった電灯の灯る、狭いラブホテルの部屋の中――。



あたしは鏡を見ながら、両手で軽く髪をととのえる。


きれいにコテで巻いたブラウンの髪。この街に初めて来たとき、あたしの髪はまっすぐな黒髪で、染めたことも、巻いたこともなかったっけ・・・。


ふと、そんなことを思い出す。


どうせこれから髪の毛なんて乱れるんだから、こんなにきちんとセットしても仕方がないんだけど・・・


心の中でブツブツ言いながらも、いつもきちんと巻いてしまうのが、あたしのクセだ。




少しして、あたしの上着のポケットの中から、携帯電話の着信音が元気よく鳴るのが聞こえた。


あたしは急いで携帯を手に取り、仕事用の高い声で電話に出る。