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―――――柚はとある家の前で足を止めた。

そこは...見慣れたはずの葉月の家の前。

もう、何十回、何百回と押したはずの

葉月の家のチャイム。

だけど今日は、そのチャイムの寸前で

どうしても手が止まってしまう...。

ここまで来たのはいいけれど

私...葉月になんて言ったら

いいんだろう...。

ドアの前で戸惑う私の後ろから

「柚ちゃん...??」

私を呼ぶ声がした。

「...おばさん...。」

振り向くとそこには、買い物袋を

両手に抱えた、葉月のお母さんの姿...。

「久しぶりねえ...。

...どうしたの??上がらないの??」

葉月、中にいるわよ??」




「...ねえ、おばさん...

私...どうしたらいいかなあ...??」